1.出版支援サービスとアカウントの開設

【個人出版支援サービス】

アマゾンでのPOD出版と販売には、アマゾン・キンドル、もしくはそれに準じた個人出版支援サービスの出版アカウントを開設する必要があります。夫はキンドル(Kindle Direct Publishing・KDP)、私はネクパブ・オーサーズプレスです(どちらも無料)。私がネクパブ・オーサーズプレスに会員登録した理由は、2021年の春に自著『二つのロサンジェルス』の個人出版を思い立った時、KDPには日本語でのペーパーバック出版サービスがなかったからです。

キンドルはその年の10月に、日本語での紙書籍出版サービスを始めました。私は試しにアカウントを作ってみましたが、情報入力が私には複雑に思われました。そこで12月に自著をネクパブ・オーサーズプレスで出版したのですが問題もなかったことから、『想い出 あれこれ』でもこちらでIDを取得しました。

キンドル(日本)については、私のIDを使って実際に出版してみようと考えています。ここではご参考までに、夫のKDP(米国)での出版申請を見て気づいた主な違いを書きます。

まず出版申請後の訂正。ネクパブ・オーサーズプレスでは料金が課されますが、キンドルでは、投稿記事 tangledで書いたように、出版した本を購入し、それを見本書籍として内容をチェックし、訂正したデータファイルを再度登録・出版申請できるので、訂正自体は無料で何度でもできます。

PDF登録のための表紙ファイルの形式も違います。ネクパブ・オーサーズプレスでは表・裏・背表紙と3つのデータ(PDF)ファイルが必要ですが、キンドルでは一つです。また見本書籍については、ネクパブでの見本書籍は本の出来上がりや本文の校正をするためのものです。アマゾンで印刷されたものではないので、紙や色味などは販売される書籍と全くの同質ではないということですが、この点は見本書籍の記事で触れようかと考えています。

【出版アカウントについて】

『想い出 あれこれ』に限らず書籍化が決まれば、まず支援サービスに会員登録します。IDを取得すると、出版データ(PDFファイル)が揃うまでに、書籍の基本情報、印刷情報、販売情報等の必要事項を入力します。

急ぐ必要はありませんが、銀行口座の登録には認証されるまでに時間がかかることがあるので、最初に済ませておきます。入力情報の一つ、アマゾンの書籍ページに表示される「内容紹介」の作成にも取り掛かっておきましょう。これは、裏表紙に付ける本の紹介文にも利用できます。

販売価格の設定を除いて情報入力が終わり、出版データがすべて整うと、アカウントを開いてPDFファイルの登録、見本書籍の注文、そして出版申請を行います。この流れは「アカウントで出版登録と販売価格の設定」の記事で書く予定です。

【今日のヒント】
・入力した情報には、販売開始後に修正できるもの(内容紹介、受取額のお支払の設定等)と、できないものがあります。

・販売価格は、本文のPDF登録後に設定します。販売価格には著者受取額を加えることができ、この受取額は銀行口座に振り込まれます。

・アカウントには書籍の出版に関する情報が掲載されていますので、よく読んでおきましょう。

ブログ記事を書籍化する - はじめに

『想い出 あれこれ』は、2013年9月から2018年8月にかけてネットサークルのブログへ投稿された13の記事を書籍化したものです。このサイトは閉鎖されましたが、私がサイトを管理していましたので、データファイルや画像はすべて私の手元に残っていました。

そのソースファイルを使って個人出版した本が『想い出 あれこれ』です。「ブログ記事を書籍化する」では、発売に至るまでの4か月の記録として以下の作業内容を、一つづつ具体的に書いていこうと思います。

『想い出 あれこれ』出版までの工程

1. 出版支援サービスとアカウントの開設

2. 本のサイズを選択

3. サンプルページ作成準備

4. ウェブ記事のコピー・ペースト

5. 本文のページレイアウト

6. 原稿の校正と訂正、確認

7. 目次、ヘダー、ページ番号の挿入

8. ブックカバーの制作

9. アカウントで出版登録と販売価格の設定

10. 見本書籍の購入と最終校正

11. 出版申請・アマゾンでの販売開始

12. 出版後に問題が起こったら…

電子書籍の出版 – Tangled

アマゾンから訂正版の Tangled が届きました。読み直したところ訂正がなかったので、これでペーパーバックが完成し、同じアカウントを使ってデジタル版に取り掛かりました。 PDF ではなく元のワードファイルでの登録でした。

ワードファイルはペーパーバックの登録にも使えます。著者の最初の本の出版登録で試したことがあります。しかしアマゾンのサーバが勝手に書式設定を変えてしまい、フォントサイズが小さくなり、行間が増え、ページ数も変わるなど、散々でした。

一方印刷する必要がない電子書籍の場合には、画面サイズに合わせてテキストの表示を調整できるので、ワードファイルでの登録が必要なのかもしれません。

それはさておき、ワードファイルを登録してプレヴューを見てみると、小説のタイトルごとに入れたヘダーやページ数が消えていました。キンドルは無料の支援アプリを提供していて、こちらを使えばより適した編集ができるのかもしれませんが、著者はこれでよしとしました。。

ただ、ヘダーを挿入するために使った「セクション区切り」が悪さをしていて、改行がおかしくなっていた箇所が2、3ありました。ワードファイルを修正してアカウントに再登録後、出版申請をクリックしたところ、Tangled のデジタル版は 2、3時間でアマゾンのサイトに掲載されました。

以上のとおりペーパーバックの出版申請が完了すれば、電子書籍のほうもほぼ同時にできます。デジタル版の販売価格は低いのですが、ロイヤルティはペーパーバックより高く設定価格の 30%か 70%です。価格設定の際どちらかを選びます。

10日で出版申請 – 短編集「Tangled」

短編集 Tangled(英語・マイケル・オノフレイ著)が、今年8月に出版されました。ワード原稿を受け取ったのが8月15日、そしてアマゾンに最終版の出版申請をしたのが8月25日と、制作から出版申請まで10日でした。

本が出来上がるまでの日数は、各々の事情で異なるので一概には言えません。しかし出版までにかかる時間は、製作、依頼、出版元(アマゾン)の三者が費やす時間の合計だと考えられます。そして Tangled の書籍化が驚異のスピードで完了したのは、「部分サポート」であったことと、次に見るようにそれぞれの時間が最小ですんだからでした。

製作者側:レイアウトが完了していたこと

Tangled のブックサイズは、先に出版した3作の長編小説と同じだったので、前のワードファイルの書式設定をそのまま使いました。本の出来上がりについて、イメージもつかめました。それに加えて本文には画像はなく構成がシンプルだったこと、短編のタイトルなどの本文レイアウトがすでに出来上がっていたこと、ブックカバー用の画像もすでに手元にあったことで、DTP作業はスムーズに進みました。

次は出版アカウントへのPDF登録とプレヴューでの確認です。以前出版したものと同じ書籍設定なので、本文もブックカバーもアマゾンの POD 印刷で許容されている入力範囲に収まっていて、エラー表示はありませんでした。背表紙のテキストの位置のずれが気になったので調整を行い、再度PDF登録をして確認し、続いて申請をクリック。ワード原稿を受け取ってから6日後の8月21日のことでした。

依頼者側:素早い対応と十分な事前準備

本の制作は共同作業ですので、訂正や確認、その間の待機などに時間を費やします。Tangled の場合は、著者である夫とは一室にパソコンを並べているので、訂正や確認があればその場で即対処できました。
これは特殊事情ではありますが、その他にも時間を節約できた理由がありました。

・短編は出版社に送ろうと著者が書き溜めていて見直しも済んでいたので、文の書き換えや校正に時間がとられなかった
・ブックカバー用の水彩画は出版に備えて描き終えていた
・アカウントは著者が必要な情報を入力し登録人は準備が完了していた

事前準備が十分で、あらかじめ本文に何度も目を通して校正を済ませておくと、こんなにも早く出版申請ができるのだとは Tangled での経験です。

申請後のアマゾンの対応:出版申請から1時間で

こればかりはこちらでコントロールできることではなく、どうしようもありません。そこで今回はアマゾンの対応(著者のアカウントは米国のアマゾン・キンドル)について述べることにいたします。

出版申請するとアマゾンから、72時間でチェックが完了し販売が開始されますとのメールが入ります。8月21日の午後午後5時11分に Tangled を出版申請したときにも、72時間のお知らせメールが届きました。しかし今回は、72時間以内と言えばそのとおりですが、本の注文が可能とのメールが届いたのは、午後6時21分。約1時間後のことでした。信じられませんが本当のことです。

今まで、著者が購入するアマゾン・日本での販売は遅れていましたが、メールには、日本とアメリカのサイトで同時販売されることも記されていました。日本のサイトに詳細はまだ記載されていなかったので、本当だろうかと不安を抱きつつ Tangled を1冊注文してみると、本は2日後の23日に手元に届きました。数えて8日後のことです。

依頼者側:書籍の見直しと訂正版の出版

キンドルでは出版申請して本が発売されても、訂正したものを再度サーバにアップすれば、新しいデータに差し替えられます。簡単に修正版が出せるのです。そこで著者は、いわば初版を見本書籍として取り寄せ、270ページほどの本の体裁や印字、内容のチェックをしました。簡単な訂正を済ませて、再度出版申請を行ったのがお取り寄せから2日後の8月25日。

こうして実に10日で出版申請が完了した次第です。

* Tangled についてはこちらにも記載されていますのでご覧ください。

セルフ出版へのヒント

「セルフ出版へのヒント」はMy Own Bookで制作した本についてその過程やヒントを書いたもです。

初めてのセルフ出版にはわからないことが多いと思います。そんなときの参考になればと思い、このブログを始めました。ご質問があれば喜んでお答えいたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。